2026年10月9日(金)
欧米豪からのインバウンド旅行者に対応できる、地域密着型の外国語ガイド体制の整備を目的とした「地域通訳案内士研修会」の第7回を開催しました。
今回は、実際に現地を訪れて飯豊町と小国町を巡る実地研修を行いました。

集合場所は、飯豊町の道の駅「めざみの里観光物産館」。朝靄立ち込める天気の中、参加者は3つの班に分かれ、やまがたアルカディア観光局の沼澤・赤間・内場がそれぞれ専用車を運転し、各地の観光スポットへ向かいました。
今回の研修では、水没林や雪室、マタギ文化、ブナの森など、自然とともに育まれてきた地域の暮らしや文化を実際に見て、学んでいきます。
白川湖 水没林に残る、かつての暮らし

最初に訪れたのは、飯豊町白川湖の水没林です。
現地では、飯豊町の加藤さんにご案内いただき、水没林の景観や、この地域の歴史についてお話を伺いました。

現在、この地区に暮らしているのは、白川荘と加藤さんのみとのこと。ダム湖ができる以前には、約30軒の住居があったそうです。
今では美しい水辺の風景として知られる場所にも、かつては人々の暮らしがありました。
目の前に広がる景色を眺めるだけでなく、そこにあった生活や地域の変化を知ることで、風景の見え方も変わってきます。

観光案内では、目に見える魅力を伝えるだけでなく、その土地にどんな歴史があり、人々がどのように暮らしてきたのかを伝えることも大切です。加藤さんのお話から、地域の風景をより深く知る機会となりました。
雪国の知恵を生かした、「雪室低温貯蔵施設 YUKIMURO」

続いて訪れたのは、飯豊町にある「雪室低温貯蔵施設 YUKIMURO」です。
こしゃる合同会社の船渡川さんに施設をご案内いただき、雪を活用した貯蔵の仕組みや、地域資源を生かした取り組みについてお話を伺いました。

雪室は、冬に積もった雪を利用して施設内を低温に保つ仕組みです。冷蔵設備に頼る電力を抑えながら、雪国ならではの自然の力を活用しています。
施設の特徴的な構造や、雪をどのように運び入れて貯蔵空間を冷やすのかなど、実際に現地を見ながら説明を聞くことで、雪室の仕組みをより具体的に理解することができました。

また、船渡川さんからは、雪室で熟成させたコーヒーを振る舞っていただきました。
施設の仕組みを学ぶだけでなく、そこで生まれた商品を実際に味わえるのも、現地研修ならではの楽しみです。
地域にある雪という資源を、保存や商品づくりに生かす。雪国の暮らしの知恵と、新たな地域の魅力づくりを感じられる時間となりました。
道の駅で地域のお土産を知る

その後、小国町の「道の駅白い森小国」に立ち寄り、休憩を兼ねて地元のお土産品を見学しました。
道の駅には、地域の特産品や加工品など、その土地ならではの商品が並びます。
観光客にとっては旅の思い出を持ち帰る場所であり、地域にとっては自慢の産品を知ってもらう大切な接点でもあります。
ガイドとして地域を紹介する際には、景色や文化だけでなく、どんな商品がつくられ、どんなものが地域の人に親しまれているのかを知っておくことも、案内の幅を広げることにつながります。
地元の食材とマタギ文化に出会う昼食

昼食は、小国町の「越後屋」さんへ。

参加者それぞれが、飯豊そばやうどん、芋煮そばなどをいただきました。

お店では、敷地内で生産しているマコモを使ったお茶もいただきました。お茶は香りがよく、お蕎麦のトッピングにもマコモが乗っていました。うどんのを頼んだ方にはハート型のうどんが入っているなど遊び心を感じます。デザートの柿くるみは半解凍のシャーベット状でクルミのソースとの相性抜群でした。
食事を通して地域の食材に触れられるのは、旅の楽しみのひとつ。普段何気なく口にしている料理も、使われている食材や生産者の話を聞くことで、土地とのつながりが見えてきます。
さらに、こちらでは熊肉を使ったそばも食べられるとのこと。さらに予約限定でなんと10万円の熊の手そばもあるそうです。
小国町といえば、山の暮らしと深く結びついたマタギ文化が受け継がれてきた地域です。店主の方も狩猟をされているそうで、食事の場でも、この土地ならではの暮らしや文化を感じることができました。
観光案内の題材は、観光施設や名所だけではありません。地域の食、食材を生み出す人、そしてその背景にある文化もまた、訪れる人に伝えたい魅力のひとつです。
「マタギの館」で山とともに生きる文化を学ぶ
昼食の後は、「マタギの館」を訪れ、資料館を自由に見学しました。
館内には、マタギ文化に関する資料や動物の剥製などが展示されています。
山の自然と向き合い、狩猟を通して暮らしを営んできた人々の文化。先ほどの越後屋さんで伺った狩猟のお話ともつながり、小国町の食や暮らしをより広い視点から捉える機会となりました。
地域の文化を案内するためには、知識を得るだけでなく、それぞれの場所で聞いた話や体験を結びつけて理解することも大切です。
食事の中で出会った話題が、資料館で学ぶ文化につながる。複数の場所を巡る実地研修だからこそ得られる学びがありました。
ブナの森・温身平で、森の時間を味わう

研修の後半は、小国町の「ブナの森 温身平」へ。
第3回目の座学の講義でもお世話になった小国町観光協会の佐野さんにガイドをしていただきました。
この日は気持ちのよい晴天。心地よい気温のなか、ブナの森を歩きながら、森の特徴や森林セラピーについてお話を伺いました。

温身平は、ブナをはじめとする豊かな森林に包まれた場所です。木々の間から差し込む光や、森の中を流れる穏やかな時間に触れると、普段の生活とは違う感覚が生まれます。
今回も、森の中で黒文字茶と茶菓子をいただき、さらに10分間のお昼寝を体験しました。

観光というと、名所を巡ったり、何かを体験したりと、つい「何をするか」に目が向きがちです。しかし温身平で過ごす時間は、森の中を歩き、香りを楽しみ、少し休むことそのものが体験になります。
森の魅力を言葉で説明するだけでなく、実際にその場で過ごし、自分の感覚で知ること。ガイドとして伝えられることを増やすためにも、こうした体験は大切だと感じました。
移動時間も、仲間と学ぶ時間に

帰りには、再び小国町の「道の駅白い森小国」に立ち寄り、お土産品の見学や休憩を行いました。
また、前回の研修で制作した深山和紙を参加者の皆さんに配布し、次回研修についての説明も行いました。その後、集合場所の「めざみの里観光物産館」へ戻り、解散となりました。
今回は飯豊町と小国町を巡る行程で、移動時間も長い一日でした。
その分、各班の車内では会話が弾み、参加者同士の交流も深まっていたように感じます。研修の内容について話したり、地域の魅力について意見を交わしたり、何気ない会話を楽しんだり。
同じ目標に向かって学ぶ仲間として、少しずつ距離が縮まってきたのではないでしょうか。
地域通訳案内士に求められるのは、地域の歴史や文化、観光スポットについての知識だけではありません。訪れる人にその魅力を伝え、旅を楽しんでもらうためには、自分自身が地域を知り、体験し、相手に合わせて伝える力が必要です。
今回の研修では、水没林に残る暮らしの記憶、雪室に生かされた雪国の知恵、食を通して出会うマタギ文化、そしてブナの森で過ごす穏やかな時間と、飯豊町・小国町の多彩な魅力に触れることができました。
次回は、旅程管理についての座学研修です。
実地で得た経験を、今度は安全で円滑な旅を支える知識へ。仲間とともに、引き続き学びを深めていきます。
















