2026年6月3日(水)
海の京都DMOのJesse Efronさんと『小桜館(旧西置賜郡役所)』に伺い、旅行会社に向けたインスペクションを行いました。
明治の長井を今に伝える、現存最古級の郡役所

小桜館は、明治11年(1878年)に建てられた旧西置賜郡役所。
現存する郡役所としては山形県で最も古く、全国でも2番目に古い建物とされ、1996年には長井市指定有形文化財に指定されています。2004年には「小桜館」としてリニューアルオープンし、現在は地域住民の文化活動や展示などにも利用されています。
一見すると、白い外壁や大きな窓を持つ洋館。
しかし、その建物をよく見てみると、どこか日本的な雰囲気も感じられます。
そこには、明治という新しい時代を迎えた日本が、西洋の文化や建築を取り入れていった当時の姿が残されていました。
「洋風」なのに、どこか日本らしい

小桜館の大きな特徴は、「擬洋風建築」と呼ばれる建築様式です。
欧米の建築様式を取り入れながら、実際の建築を担ったのは日本の棟梁たち。
つまり、西洋の建物をそのまま再現したのではなく、日本の木造建築の技術を使って「洋風」の建物をつくったものです。

建物には、下見板張りの外壁や上げ下げ窓、2階のバルコニー、ファンライトの色ガラスなど、当時としては新しい西洋風の意匠が取り入れられています。
一方で、そのつくりには日本の大工技術が息づいている。
近づいて細部を見ていくと、「洋館」と一言で片づけられない面白さがあります。
明治初期の日本が、海外から入ってきた新しい文化をどのように受け止め、自分たちの技術で形にしていったのか。
小桜館は、その過程を建物そのものから感じることのできる場所です。
長井の「近代化」を伝える建物

当時の西置賜郡役所は、現在の長井市を含む西置賜地域をまとめる行政機関でした。
明治から大正にかけて、「郡」という単位は県と町村の間に位置する地方自治体として機能しており、郡役所は国や県の出先機関として、町村への指導や監督などを行っていました。
そのため、小桜館は単なる古い建築物ではありません。
この建物が建てられた明治11年という時代、長井が西置賜地域の行政の中心のひとつとして機能していたことを伝える、まちの歴史そのものでもあります。
当時の長井がどのようなまちだったのか。
館内に展示されている写真や資料を見ながら建物を歩いていると、今とは違う時代の長井の風景が少しずつ浮かんできます。
写真と資料から見る、かつての長井

館内には、当時の長井や西置賜地域の様子を伝える写真や資料が展示されています。
写真に写る人々の服装や建物、当時のまちの様子。
現代の長井の風景と見比べながら眺めてみると、「この場所にも、こんな時代があったのか」と、普段何気なく歩いているまちの見え方が少し変わります。
歴史を知るというと、年表や文字資料を読むことを想像しがちですが、こうした写真や建物を実際に目にすることで、過去の出来事がより身近なものとして感じられます。
一度は失われかけた建物を、未来へ

小桜館は、現在までずっと同じ姿で大切に使われ続けてきたわけではありません。
役所としての役割を終えた後も県や国の出先機関などとして利用され、時代の中で増改築も行われました。その後、長く倉庫として使われていた時期もあります。
しかし、歴史的な建物を残そうという地域の動きなどによって保存され、改修を経て、現在のように文化活動や展示などに活用される場所となりました。
現在は「文化財として保存する」だけではなく、市民が使える場所として活用されていることも、小桜館の大きな特徴です。
古い建物をただ眺めるのではなく、今の人たちが実際に使い、そこに新しい活動が生まれている。
それによって、明治から続く建物が「過去のもの」ではなく、現在進行形でまちの中に存在しています。
歴史を「見る」ことから、まちを知る旅へ

今回のインスペクションを通して感じたのは、小桜館は建築好きの方だけでなく、長井を初めて訪れる方にも、まちの背景を知ってもらうきっかけになる場所だということ。
明治11年に建てられた建物の中に入り、当時の写真や資料を眺め、建築の細部に目を向けてみる。
そうすると、普段歩いている長井のまちが、少し違って見えてきます。
「ここには昔、どんな人が暮らしていたのだろう」
「この建物が建てられた頃、長井はどんなまちだったのだろう」
そんな想像が広がることも、歴史を訪ねる旅の面白さなのだと思います。
見学は無料。
長井のまちなかを歩く際には、ぜひ立ち寄って、明治の面影を残す建物と、そこから見えてくる長井の歴史に触れてみてください。
■小桜館(旧西置賜郡役所)
https://www.bunkyounomori.com/kozakurakan/
開館時間:9:00~17:00(活動・展覧会など開催時は21:00まで)
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)
見学料:無料(施設利用は有料)
















