信仰を集める、産霊むすひの力

小国町大宮地区で古くから信仰を集めてきた大宮子易両神社おおみやこやすりょうじんじゃ
奈良時代の和銅5(712)年、遠江とおとうみの国(現在の静岡県)小國おくに神社から「大宮神社おおみやじんじゃ」を観請された神社である。その後、小国町二宮原地区にある「子易神社こやすじんじゃ」と合祀ごうしされ、「大宮子易神社おおみやこやすじんじゃ」となった。お祀りしているのは、大宮神社は大己貴命おおなむちのみこと、子易神社は木花開耶姫命このはなさくやひめのみこと国常立尊くにのとこたちのみこと高皇産霊尊たかみむすびみこと神皇産霊尊かみむすびのみことの五柱。命を与え、生み出し、育む産霊むすひの力を持つ神様であることから、子授け、安産、子育てのご利益があるとされている。

神社は県道267号線に面していて、国道113号線が開通する前まではここが新潟と山形をつなぐ道であった。そのため新潟県からの参拝客が多く、参拝、祭事などの行事を集団で行う「こう」は置賜地域、山形県庄内地方のほか、新潟県下越地方にも広く存在。各地域で大宮子易両神社おおみやこやすりょうじんじゃを合祀している神社も多く見られる。交通の発展や暮らしの変化に伴い集団での参拝講さんぱいこうは減少したが、身籠ったときには安産祈願に訪れるという歴史と風習が「こう」を通じて今も語り継がれている。

自然に心を寄せ、生命を慈しむ

広い境内は豊かな緑に囲まれ、さまざまな樹木が葉を繁らせている。手入れを行っているのは遠藤成晃えんどうなるあき宮司。先代から神社を引き継いで以来、創建1300年の歴史と信仰の重みを感じ、大宮子易両神社おおみやこやすりょうじんじゃが守り継いできたものを後世に伝えることを使命としている。

「神道はもともと、大きな木や岩そのものに神性をみる自然崇拝から生まれています。ありとあらゆるところに神様がいて、それを大切にしなければならない思う日本人の心、精神の根本にあるのが神道。宮司は神事を執り行うだけでなく、そういった心の部分を伝統として伝えていかなければなりません」と語る。
植物に触れる毎日の営みが自然な世界への理解を深め、共にある命の有り難さを感じるという。現在は、かつて参拝客の散策路となっていた緑豊かな「ささやきの小道こみち」を復活させたいという願いを持ち整備に意欲を見せている。「神社は地域の人々に祀られ、守られて今の姿があります。また、遠方から参拝にいらっしゃる方もいます。来られた方が心を寄せ続ける神社であるために、先人が守ってきたことを大切に受け継ぎながら、新しいことも楽しんで取り入れていきたいです」。ふと足を運べば、いつでも心に安らかな静寂と普遍の命脈が感じられる大宮子易両神社おおみやこやすりょうじんじゃ。命をつなぐ人々の心の拠り所である。

INFORMATION & MAP

大宮子易両神社
〒999-1342 山形県西置賜郡小国町大宮237
https://oomiya-koyasu.or.jp/index.html
TEL:0238-62-2347
受付時間 9:00〜16:00