やまがたアルカディア
観光局とは
「日本最強のローカル」置賜。
体験と関係性をつくる
新たな「観光」を提案
(一社)やまがたアルカディア観光局理事
(戦略会議委員長)
鷲見 孝氏
2019年2月に設立した「一般社団法人やまがたアルカディア観光局(理事長 内谷重治)」。なぜいま地域連携が必要なのか、標榜する観光の形と地域の未来についてお話を伺いました。
ーやまがたアルカディア観光局設立のメリットは?
山形県内は東根市を除いて人口減少が続いています。昨年(2019年)の実績で、長井、南陽、白鷹、飯豊の4市町で972人減。国の統計で一人当たりの年間消費額が125万円とすると約12億2千万円の消費が減ることになり、地域の消費は疲弊し税収も減ります。地域が消滅してしまう危機感が強まっているものの、1つの町や市でインバウンドや観光消費による地域経済の活性化を目指すには限界があります。そこで置賜地方でまとまって地域の魅力を発掘し磨いて提案していくアイデアが生まれました。観光名所、食べ物、交通エリアなど提案できる素材が増えるというメリットがあります。
ーこれまでにない組織の特性はありますか?
行政がスタートしたプロジェクトですが、民間の知恵とアイデアを持ち込み具体的な数字を見ながら自走できる仕組みをつくろうとしています。行政は構造上、横の連携が取りにくいので、当局では市や町への危機感を背景に持つ人たちが集まる「戦略会講」がプレーンとなり、9つの専門部会を動かしていくことでスピード感を持って推進します。メンバーは30代から40代のバリバリの現役で次世代を担う人たち。誰かが強いリーダーシップを持って進めるというよりは意見を合わせ合議制で決めていくやり方です。
ーミッションやビジョンはどのように?
まさにこのメンバーと、何十時間も頭が燃えるぐらいに議論して生み出しました。専門のライターに頼むよりも地元の人が悩んで悩んで、考え抜く言葉の方が本物感があるなと思ったんです。借り物の言葉ではないから真剣になるし確信をもって広められるんですね。観光業の人だけでなく地域の人がみんな「アルカディアはこう」と語れるくらいのコンセプトをつくり、初めて訪れた人が「なんか自分の故郷みたいだな」と思ってもらえるような、体験と関係性を得られるようにしていきたいです。
ーご自身が移住者であることや前職での経験は何か作用していますか?
観光客の目に何がどう映るのか、第三者的な視点で素材を磨くことができると思います。「最強のローカル」なんていうと大上段に感じますが、消費者は自分に必要な物を一瞬で判断するので、とんがらないと選んでもらえません。そのためには地域の魅力を磨き上げ、細かなディテールまでこだわっていく必要がありますが、この2市2町は素晴らしい原石なんじゃないかなと感じています。
PROFILE
鷲見 孝(すみ たかし)
岐阜県出身。商社マンとしてイタリアに6年在住した後、フェラガモ、エルメスジャポンなどの要職を歴任。義母との同居を機に2017年に夫婦で川西町へ移住。『はぎ苑』を経営する(株)長井観光の社長に就任。