郷土に長く伝わる
昔ながらの酒
どぶろくに
魂を宿す

アルカディア地域が誇る地酒と、アートによる新しいコラボレーションをお届けする〈OMIKI プロジェクト〉。
今回は飯豊町の「どぶろく」と世界にダンスミュージックを発信する
DJ KENTARO、
画家でイラストレーターのKensuke Takahashi が連携した。

旨み弾ける中津川の
どぶろく

飯豊町中津川の特産品、どぶろく。冬が近づく季節になると、地元で獲れた米と飯豊山系の良質な水、麹、酵母を使って毎年仕込みが行われている。古来よりどぶろくは豊穣祈願のため神様に供えられる風習があり、かつては各家庭や農家でも製造されていたが、酒税法の制定以来、認可を受けた施設でしか造ることができない。飯豊町は、2004(平成16)年に「どぶろく特区」に認定され町内3つの温泉施設で造られていた。しかし、担い手不足と不況から1軒を残すのみとなってしまった。

温泉施設「白川荘」の高橋亮たかはしまことさんは職員として働きながら、冬場はどぶろく杜氏として山の上にある作業場でどぶろく造りに精を出している。使用するのは、地元中津川産の酒米「出羽燦々でわさんさん」。
70%まで磨いた米をていねいに洗米、吸水したあと米を蒸しあげ、そこから一気に蒸米の温度を下げる。それに、水と麹と酵母菌を合わせまんべんなく麹菌が行き渡るようにしておいたものと仕込み水を加え仕込みは完了。「目指す気温は7度から8度。雪が降る中でも窓を開けて扇風機を回わしてね。仕込みの温度はもう少し高くてもいいと言われたけど、こっちの方が出来がいい気がして」という高橋さん。

発酵が始まると、毎日2度ほどずつ上がっていく温度を測りながら攪拌かくはんを進めていく。12度から14度に保ち約1ヶ月。最初は重かった手応えが徐々に滑らかになり、アルコール度数が12度に近づいてきたら、発酵を抑えるように自然に温度を下げていき完成となる。冬の間に仕込むのは2600リットルほど。火入れ作業を行い、冷蔵、冷凍保存で長期間販売できるようにしていて「中津川のどぶろくが飲みたい」というファンの要望に応えている。どぶろくの醍醐味は、もろみの口あたりと豊かな発酵感。火入れ作業をおこなわず酵母が生きたまま封入された『生どぶろく なかつがわ』は、口に含んだときに炭酸が弾けるような感覚があり、酵母がつくりだす旨みをより楽しむことができる。こちらは瓶詰めすると膨張してしまうため「白川荘」店頭での限定販売となっている。

〝音発酵〟で
さらに楽しい酒に

「どぶろくはもろみを絞らない、〝途中のお酒〟。一杯で完結するというより、宴席の途中で出てきてみんなで味わってもらう雰囲気が合ってると思います。そこで美味しいね、と言ってもらえたらそれは嬉しいですよ」と、高橋さんは笑顔を見せた。仕込んだタンクに耳を寄せると発酵中に発生したガスが上がってくる音が聞こえる。「どぶろくは生き物と同じ。人が聴いて心地よい音楽を聴かせたら、菌は良い酒をつくってくれるんじゃないかな」と、音による発酵の変化に期待を寄せた。

酵母も踊る
祭りの
ダンスミュージック

今回のコラボレーションでは、仕込みから発酵期間のうち20日間ほど、どぶろくに音楽を聴かせるという新たな試みをしている。サウンドクリエイターは、ターンテーブリストの DJ KENTARO。どぶろくに聴かせるために書き下ろした曲『マツリ by DJ KENTARO & DJ Ride』は、目には見えない発酵世界を映像化したかのような、壮大で奥行きのある世界観とスリリングな展開をみせるダンスミュージックだ。テーマとなっているのは和の祭り。この地域には、獅子舞の文化が伝わり、そのお囃子から、笛、太鼓、掛け声をサンプリングし、新たなビートを創り上げた。

「発酵中に音楽を聞かせるという、いわば楽曲入りのお酒造りという発想にまず驚きました。どぶろくに魂を宿らせるというコンセプトにすごく惹かれ、関わることができて嬉しく思っています」と語る KENTARO さん。制作には3ヶ月以上をかけ、ポルトガル在住の DJ Ride と共作を進めた。笛や太鼓は実際に演奏している音を録音。獅子舞を見て感じた激しさ、力強さを表現し、獅子が戦うようなイメージも曲に込めたという。「どぶろくという個性的なお酒と、和の祭りの音が合体するという新しい挑戦ができました。音楽にお酒は欠かせないもの。できれば身近な人と楽曲を聴きながらお酒を飲んで、楽しんでほしいですね」。今後も日本の祭りの音楽を使い、日本ならではのダンスミュージックを世界に響かせたい、と意欲を語った。

DJ KENTARO Profile

DJ KENTARO

ターンテーブリストであり、サウンドクリエイターである日本のDJ。世界最大のDJ バトル「DMC World Final2002」において大会史上最高得点というギネスを残し、今日までいまだやぶられておらず、文字通り圧勝でアジアから初の世界チャンピオンになる。その後、国内のビック・イベントや海外のフェスティバルなどに積極的に出演。40日間に渡るソロEUツアーなどを収めたDVD作品「National Geoscratch」を2005年1月にリリース、同DVD に収録された〝Loop Daigakuin〟は、Youtube の視聴回数300 万ビューワーを越える。またNHKの番組「トップランナー」やSpace Shower TV ID など数々のメディアにも積極的に登場し、2004年12月にはUK屈指の老舗レーベル(Ninja Tune)の音源のみを使用したミックスCD「On The Wheels Of Solid Steel」が世界リリースされる。また様々な楽器奏者や歌い手ともセッションを重ね、国内外アーティストのリミックスや楽曲参加など、数多くの作品を世に出している。2006年4月に(Ninja Tune) とアーティスト契約を交わし、1stソロアルバム「Enter」を2007年に世界リリース。その独特にして強烈なリズムとジャンルを縦横無尽に駆け巡るサウンドデザインが評価され、オリコン・インディーズチャート1位、iTunesのダンスチャートではアルバム、シングル共に1位を獲得。2008年にはUKのレゲエ・レーベル(Pressure Sounds)よりレゲエオンリーの「TUFFCUTS」、2011年4月にはカリフォルニア州で行われた米最大級の音楽フェス、コーチェラ・フェスティバルに出演を果たす。2012 年には2nd アルバム「Contrast」をリリースし、新たにBass Music Festival「BASSCAMPフェスティバル」を新木場ageHa にてスタートさせる。(*2015 年からはフェスの舞台を海外はフィリピン、タイへと移動し成功をおさめる)。2012年夏にはフジロックのホワイトステージにも出演した。地球上をジャンルレスな音楽観と共に飛び回るターンテーブルマエストロ、DJ KENTARO は、今もなおターンテーブリズムシーンの最前線を走り続けている。自身が講師を務めるDJスクール「World DJ Academy」を2015 年に開校。クラブイベントSunny Golden も渋谷Contact にて開催中。現在3rd album 絶賛制作中。自身のレーベル、「Endeavor Family Recordings」からも数々のチューンを世界発信し、傘下レーベルにはタイ・バンコクにベースを置く「GOJA Records」がある。Youtube チャンネル、「世界のオカモト」や、ウィークリー生ライブ配信Twitch チャンネル「日曜岡本劇場」も要チェックだ。

youtube.com/djkentarotube

instagram.com/djkentaro_official

twitch.tv/dj_kentaro

twitter.com/djkentaro

Kensuke Takahashi Profile

Kensuke Takahashi

横浜出身在住のペインター/壁画家
確かな描写力・緻密なテクニック・現実を飛び越える自由な発想力で、あえて画風を決めずに描くスタイルで大型壁画を中心に飲食店舗内壁画、企業や行政へのアートワーク提供やライブペインティングイベント出演等活動の幅を多岐に広げている。近年では、大型の壁画として川崎市役所本庁舎・JR横浜駅エキナカ・横浜吉田町・横須賀・町田・八王子・Pow!Wow!Japan 神戸・マカオ等にて制作。そして、神奈川県啓発事業・横浜開港祭2019/2021 へアートワーク提供等幅広く活動中

instagram.com/kensuketakahashi1977.art/

OMIKIプロジェクトに
ついて

やまがたアルカディア観光局では、東洋のアルカディアと呼ばれる当地域のお土産開発プロジェクトの一環として、日本独自の文化である日本酒を通して世界に当地域を発信すべく、当地域の酒蔵と世界的に著名なグラフィックアーティストがタッグを組み、地域の神社に酒造りの成功をご祈祷していただいた上で、オリジナルの日本酒を開発。観光局のお土産として販売する「OMIKIプロジェクト」を進め、世界に「SAKE」のハイブランドとして「OMIKI」を販売・展開・プロモーションしていくプロジェクトです。

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